設備設計・VE事例 実務ノウハウ

【実例公開】高層共同住宅の連結送水管(乾式)設計: 保有水量500L以下で補充水槽をなくす計算手法

高層共同住宅や大型ビルの設備設計において、機械室のスペース確保と設備コストの最適化は重要課題です。本記事では、実例データを基に「保有水量500L以下」を達成し、補充水槽を不要にする具体的な計算プロセスと、Web上で試せるシミュレーターを公開します。

高層共同住宅や大型ビルの設備設計において、常に頭を悩ませるのが「機械室のスペース確保」と「設備コストの最適化」です。特に消防設備である連結送水管(連送配管)の設計は、建物の有効面積や全体の建築コストに直結します。

この記事では、実際の設計資料である「連送系統図」の実例データを基に、連送配管の保有水量を500L以下に抑え、補充水槽を不要にする具体的な計算手法とプロセスを解説します。

なぜ乾式系統で「保有水量500L以下」が重要なのか?(背景と基準)

湿式と乾式の違い・補充水槽のネック

連結送水管には、常に配管内に水が充填されている「湿式」と、通常時は空の状態である「乾式」があります。高層建築物において乾式系統を採用する場合、火災発生時に送水口からポンプ車で送水した際、配管の先端まで迅速に水が到達するよう、配管内を満水にするための「補充水槽」を最上階などに設けるのが一般的です。

しかし、この補充水槽の設置には以下のネックが生じます。

  • スペースの圧迫:居住面積や設備用有効スペースが削られる。
  • 建築コスト増:水槽本体、付帯配管、架台などの材料費および施工費が増加。
  • 維持管理の負担:定期的なメンテナンスコストの発生。

「500L」の壁とクリアするメリット

上記の問題を解決する鍵が、「配管内の保有水量」です。実務上の設計基準において、乾式配管の保有水量を500L以下に抑えることができれば、補充水槽の設置を省略できるという大きなメリットがあります。 これにより、デッドスペースの削減と大幅なコストダウン(VE:Value Engineering)を同時に達成することが可能になります。

【実例解説】保有水量を500L以下に抑える配管サイズ・長さの計算ノウハウ

物件概要と配管の基本条件

本実例では、高層共同住宅における連結送水管として、圧力配管用炭素鋼鋼管であるSGP-SCH40を採用しています。配管の肉厚があり、高層階への送水圧力に耐えうる仕様です。

実データに基づく保有水量の計算プロセス

補充水槽を不要にするため、設計段階で配管ルートとサイズを厳密に割り出し、保有水量を算出します。以下が連送系統図と、実例に基づく計算書のデータです。

連送配管系統図(SGP-SCH40)
図1: 実例物件の連送系統図(スラブレベルと配管サイズ明記)

【連送配管(SGP-SCH40)の保有水量 計算書】

100A配管(立主管など)
  • 内径:102.3mm
  • 長さ:57m
  • 保有水量:468L
65A配管(枝管など)
  • 内径:65.9mm
  • 長さ:7m
  • 保有水量:24L
総保有水量 (468L + 24L)
合計:492L

このように、配管ルートを最適化することで総保有水量を492Lとし、基準である「500L未満」を見事にクリアしています。

インタラクティブツール

配管保有水量 シミュレーター

配管の長さを変更して、500Lの基準にどう影響するか試算できます。

57 m
※実例は57m
7 m
※実例は7m
総保有水量(推計)
492
リットル (L)
✓ 500L以下基準クリア
500L

設計時の注意点と稟議・消防協議を通すポイント

階高を考慮した精緻な配管ルートの割り出し

保有水量をギリギリまで最適化するためには、建物の断面図から各階の正確な寸法を拾い出し、配管長をミリ単位で把握する必要があります。 今回の実例では、各階のスラブレベル(SL)が緻密に計算されています。

RSL〜11SL
各2810mm
7SL〜5SL
各2860mm
4SL〜3SL
各2910mm
2SL
3550mm

階層によって異なる階高を正確に合算し、無駄な配管の迂回を防ぐことが、限られた容量(500L)に収めるための必須条件です。

消防協議をスムーズに進めるエビデンス化

「補充水槽不要」で所轄消防の承認を得るには、担当者を納得させる明確な根拠が必要です。本実例のように、配管サイズ、内径、長さ、保有水量を明記したリスト(計算書)と、スラブレベルが明記された系統図をセットにして提出することで、消防協議や社内の設計稟議をスムーズに通過させることができます。

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